2017年4月8日土曜日

モスモス開封の儀

どうも皆様おはようございます。
万太郎です。


 前回、専務より課題(ネタ)をいただいた。

モイストモス。

まずは、マニュアルだ。

モイストモス


「お水を上げると、目を覚ますように葉を開く…

一週間に一度程度、霧吹きで水を与える…

日光を好むので、最低2,3時間は日光に当てる…

暑さ、寒さには強い…」

サボテンとエアプランツの育成経験のある私からすれば、何てことはない。

100円均一の観葉植物でさえ妻が嫌がるくらいに大きくしたこともある。

簡単すぎる。

地味だ。

一瞬で終わってしまう。



私は開封されたばかりの、この部屋の臭いを新鮮に感じ取っているであろうこの針金のような生き物をじっと見つめる。



よくよくみると、一本一本は確かに死んでいるかのようだ。

身を固くし、身体を縮こませ、じっと何かに耐えているかのように、そもそも此処に自分など存在しないかのようにその存在感を消している。

こいつが生き返るというのか。

世の中に様々な宗教があり、 転生、再生が謳われることがあるがこの植物にそれが可能だというのか。

私は水の入った霧吹きを手に取り、その植物に向ける。

トリガーをゆっくりと力強く一度、そして二度引き絞る。

霧吹きの噴射口から、植物にとって摂取しやすいように細かく裁断された水が優しい雨のように降り注ぐ。

一本一本針金のようだった植物が、裁断された水の衣を纏い輝きを彩る。

再生だ。

針金は隣同士、衣を見せ合い、それぞれ誇らしげで、生を存分に楽しんでいるように見える。

みるみるうちに植物は生の輝きを吸収し、次の雨を待っているようだ。

開封したときは沈み混んだ緑色をしていた植物は、今、彩りを手にし、新鮮なみずみずしい緑へと変貌を遂げていた。



針金のように惨めだった生き物は、命の雨を吸い込み、体に密着させていたであろう刺のような葉をこれでもかと自慢げに広げ、今やところ狭しと大いに自己主張をしている。

この間、せいぜい5秒ほど。

何かに気を取られていたら、その成長には気づけないであろう。

マニュアルによると、新芽が芽吹き、密集しながら更に縦に伸びるとのこと。

ほう…。

 私は植物に対する一週に一度の育成業務を終了し、改めてそれを眺める。




専務…、もう少し派手なやつを…。



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