どうも皆様おはようございます。
万太郎です。
霧が深い。
これは、新しいトラップなのだろうか。
浮きの視認性は落ちる。
護衛に影響があるかと言えば、そうでもない。
棒浮きや、電気浮きを使えば解決できるレベルでもある。
トラップというのならば、ずいぶん地味なトラップだ。
今日は暖かい。
今日こそ奴らが来るかもしれない。
そんな期待不安を胸に棚を調節し、仕掛けを投げ続ける。
護衛を始めて1時間ほどしたその時。
ぽつりぽつり。
近くまで来ていた検針屋が空を仰ぎ見て、それに倣って私も空を見る。
私と検針屋は同時にフードを被り、ため息をつく。
予報では一日曇りだったはずなのだが。
そうか、この暗い空、濃い霧は雨への前兆だったのかもしれない。
やむ気配どころか徐々に強くなる雨に、否応もなく退散を求められる。
私は海老を回収し、荷物をまとめ、移動を決心する。
あそこなら。
人のいない今日だったら、あそこでなら護衛が続けられるはず。
私は思い立った場所へ急ぐ。
駐車場へ戻る方向への移動中、見覚えのある虫と出会う。
フナ虫だ。
ここしばらく奴らを見ていなかったが、ついに目の前にその姿を現した。
そのG虫に似た、釣り初心者をまず震え上がらせるフォルム、時にその身を挺して魚を呼び寄せる恐ろしい性質。
やはり暖かくなってきたのだ。
そんなフナ虫を横目に私は目的の場所に到着した。
橋(ゲートブリッジ)の下だ。
ここであれば、雨であろうと護衛を続けられる。
この橋の下の橋脚まわりはストラクチャーとされ、シーバスを狙うルアーの方々が陣取っていることが多い。
だが、今日は人が少ないので、ここで護衛をしようというわけだ。
私が橋の下に移動するのとほぼ同時に一組のカップルが橋の下に訪れた。
二人ともルアー竿を持っている。
私は無関心に、仕掛けを投げ入れる。
ここは堤防にも近いことから、シーバスだけでなく根魚の住みかとしても評判がある。
先ほどと同じ浮きの位置では根がかってしまうかもしれない。
浮きを調節し、海老の生存を確かめていると、隣から…
ヒュン、
ヒュン、
と、ルアー特有の竿の風切り音が聞こえてくる。
そして…ついつい視界に入ってしまう。
結局は橋の下だ。
狭いのだ。
カップルがルアー竿を振りかざし、その隣で私が浮きを調節し、海老を護衛する。
ふと、昨日の花見の時に喧嘩していたカップルを思い出す。
天気のせいで、喧嘩をしていた。
今日も天気のせいでカップルが場所を追われている。
…。
私が、この橋の下にいるのも野暮天だ。
「愛は勝つ」か。
橋の下に来てから、10分もしていないが、私は海老を仕舞い、リールを巻き、竿を片付ける。
彼らの「愛」で、私は今、海老の護衛を諦めた。
私の護衛も、海老への愛も、まだまだだ。
将来、私のこの甘さが足元をすくわれるかもしれないな。
たった一時間ちょっと。
納竿。
いつもより早く事務所に戻ると、雨で散歩にいけない専務が悲しげに外を眺めていた。
くーん(散歩愛か…)
もう愛もネタもありません。ボーズ。
0 件のコメント:
コメントを投稿