どうも皆様おはようございます。
万太郎です。
高洲海浜公園。
とても綺麗な公園だ。
私はギマとの長い攻防から、徐々に護衛の腕を上げていった。
この頃はまだ、投げ釣りである。
ギマからの襲来が減り、これで最後とばかりに手の平サイズの蟹に襲われることが一度あった。
蟹はカニ、という可愛い響きとは裏腹にとんでもなく凶暴で、指でも挟まれようものなら切断されるほどの鋏力を持ち合わせていた。
私は恐怖におののき、カニには結局海にお帰りいただいた。
しかし、その後は私の護衛を恐れ、魚はすっかりと息を潜め、イソメに傷一つ付かずに護衛を終える日が続いた。
高洲海浜公園。
公園から50m程の沖合いで漁船が網を投げ、エンジンの轟音を響かせる。
どこからかやってきた大型の船が土砂を海底に投げ入れている。
自転車でふらふらと散歩に来たオヤジが最近は釣れねえなあ、とぼやく。
近くの境川では大きなハゼがいたが、最近はそこで牡蠣だか貝だかを乱獲していく輩が増え、ハゼも随分減ってしまったと嘆く。
なにやら、悲しげな話ばかりであった。
その中で、私の護衛は完璧に近いものになっていった。
そして、私は有頂天になっていた。
私は自分の護衛能力に自惚れ、自信過剰となり、酒におぼれる日々が続いた。
酒を飲んでは、酒場の店主に護衛自慢をし、深夜の町を徘徊した。
そんな時だ。
私が社長に出会ったのは。
いつものように酒を浴びるように飲み、 朝方まで町を徘徊し、そのままガードーレールにもたれ掛かり意識は朦朧としていた。
アルコールでぼんやりした意識のなか誰かが駆け寄ってくる。
妻だ。
心配になって探しに来たのだろう。
妻が私を起こそうと声をかける。
しかし、私はその驕れから、誰のお陰でイソメが暮らしていけると思ってるなどと暴言を吐く。
その時だ。
誰かが私の頬を殴りつけた。
社長だ。
私はもんどりうって近くのごみバケツに頭から突っ込む。
乾いたワカメや黒くなったバナナの皮の中で朦朧とする意識の中に、何かが聞こえた気がした。
若州に、若洲海浜公園に行ってみろ。
若洲…。
あの複雑な人工磯。
入る間もない堤防。
優しいオヤジ達。
そして、その雑踏から逃げるように帰ってきたあの日。
昔の記憶が私の中に再生される。
私の護衛の腕も上がってきた。
今なら立ち向かえる。
私は有頂天になっていた自分を恥じ、反省し、心に決めた。
よし、若州に行こう。
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