巣ごもり万太郎です。
良型のハゼ2匹とその他小型数匹を持ち帰った。
私の護衛術があってこそ、ハゼの数はこの程度で済んだ。
だが、もし素人が手を出していたら、この倍の数のハゼがここに横たわることになっていたであろう。
しかもこのハゼは巣からでてきたものである。
巣から出てここに直接連れてきてしまったハゼや魚についてはやや危険である。
巣と魚が、依然つながつていて、この殲滅隊本部の情報が漏れる可能性があるのだ。
思念伝達、いわゆるテレパシーと言われるものであろう。
この魚の思念伝達を断ち切るのは、やはりある一定の儀式が必要である。
準備するのは、油、アサリ、片栗粉、塩。
油を使用するのは、私達、生命の資本である水、これと分離する性質を持つことから、魚の肉体と巣との思念的な繋がりを分離することが出来る。
また、アサリはこの困難極める儀式においての難易度を究極的に下げる役割がある。「あっさり」終わる、という言葉は、アサリの語源になっていることは言うまでもないであろう。
そして、片栗粉は片、すなわち固まるを意味し、儀式の締結を強固なものにすると共に、「栗」という言葉は「繰りかえし」を意味し、この儀式に連続性を与え持続的な粘り強さが出ることで知られている。
では。
私は上半身裸になり、あぐらをかく。
油を手に取ると、油をおもむろに体にうちつけた。
数回これを繰り返す
最後に、両の手に油をとると頭からゆっくりとかけ、全身を油が流れるように背筋を伸ばす。
目は大きく開けたままだ。
油が体に馴染んだところで、片栗粉を手に取る。
ずっと立ち上がると、片栗粉ひと握り手に取り、頭部の前で1度これに念を加える。
そして念が片栗粉から散る前に、上空へ片栗粉を放つ。
はらはらと落ちる小麦粉が床一面に広がる。
その床一面に拡がった片栗粉の中央へ、先程のハゼを丁寧に並べる。
この間隔を間違えると術式が反転し、逆に思念伝達手伝う結果となり、目も当てられない結果になることは皆様ご周知の通りだ。
ハゼを並べ終えると、塩をひとつまみハゼ1匹づつに振り掛ける。
それを終えると、私は床に拡がった片栗粉の一面を、軽やかなステップで数歩離れる。
そして、間を置かずにきびすを返し、全力で片栗粉に走り込む。
一面に拡がった片栗粉の数歩手前で、軽く床を蹴り、頭から片栗粉に飛び込む形をとる。
そして、空中で両の手を広げ、胸、腹から床に着地する。
ここで先程の油が効いてくるのだ。
油が床との摩擦を減らし、片栗粉を吸い、ハゼは腹で潰され、身体の下で撹拌され、三位一体が完成するのだ。
これにて、完了。
アサリうめえす。あ、ハゼもな。
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