ドクター万太郎です。
仕事を終え、夕食を食べ、ソファに腰を下ろし、一息ついていた。
先日、イソメの提案により、急遽旧中川に行った。
本日もまだ、幾つか余ったイソメのうちの1匹が言う。
「今日もおひとつ、いかがですか、万太郎さん」
何匹かと絡み合いながらうっとりとした目で私を誘う。
今日は平日、しかも月曜日ではあるものの今週は木曜日に祝日を控え、心にゆとりはあった。
「久しぶりの護衛で万太郎さんも少し乗ってきたんじゃないですか?ふふふ。」
確かに磯目に針を通すことも久しく、高揚感があったのは間違いないし、イソメのテンションも上がっているようだった。
社長も昨日の感じからするとおそらく何も言わないであろう。
今日は専務も同行することとした。
私は専務のリードを持ち、荒川に向かった。
荒川はシーバスを疑似餌、ルアーでされている方をよくお見かけするが、荒川の別の場所とはいえ、ウナギの動画もよく見かけている。
本日は、イソメを投げることとした。
外に出てみると風がかなり強い。
荒川に着くと、夜八時、11月ながら2組ほどの釣りをしているであろう、ライトを見かけた。
こんな遅くまで、皆様ご苦労様です。
今回私は重めの重りをつけ、三本針にて、仕掛けにイソメを3匹付けたものを準備した。
風が強く、夜間のため、仕掛けがどこに行ったのかさっぱり分からない、これが夜間の護衛の難しいところだ。
イソメをゆっくり引く。
流れの速さなのか、ストラクチャーがあるのか、何かが流されてきているのか、はたまた、イソメが魚に襲われているのか、なかなか判別が難しい。
何度か引き上げてみては投げる。
数回投げて、イソメの無事を確認する。
絡まっている。
重りの方から、かなり複雑に絡み、魚に襲われたのであろう、イソメもぼろぼろだ。
くそ、いつの間に。
「くーん、くーん」
専務を心配そうにこちらを見ている。
オペだ。
私は竿を地面に置き、仕掛けを手に取る。
なんとむごいことだ。
できるだけメスは使いたくない。
外部からの指圧により、絡みを解消するのがイソメにとっても仕掛けにとっても負担が少ない。
私は風が強い中、慎重に絡み合った糸をたぐる。
場合によっては2mmの隙間に意図を通し、さらにそこを広げイソメを通さなければならない。
「メス……、いやラジオペンチを」
専務がラジペンを手渡す。
「くーん」
「大丈夫だ……、必ず……治す…!。」
私は本腰をいれ、地べたに尻をつく。
足を組み、ラジペンを握り直す。
時間は刻刻とすぎ、私の帰宅予定時間も迫ってくる。
「汗」
専務がタオルを私の額に当てる。
ようやく重りから3匹が離れると、あとは落ち着いてやれば何とかなりそうだ。
かなり時間はかかったが、仕掛けは元の通りに治った。
「オペ、終了だ……」
私はぐったりとし、大きく息を吐いた。
イソメは意識が戻り、状況を理解したのか、私に向け拳を向けた。
私は静かにその拳に私の拳を当て、にっこりと笑った。
さて、もう一投げ!なんも釣れませんでした。
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