私はその大きな湖をぐるりと見渡し、大きく息をついた。
ここで大きな魚、スネークヘッドが現れ、村の人々の田畑を荒らし、女子供を連れ去り、家屋で暴れ回るという被害が出ているらしい。
村長に話を聞こうと思い、家を尋ねると思い沈黙があった。
長い静けさの後、村長はぼそりと言った。
「スネークヘッド退治など、やめて下さらんか。」
話を聞くと、最近では一定の供物、生贄を提供し、その代わりに村で暴れるのを控えてもらう協定が出来ているらしい。
しかし、その生贄は生きた人間だと言う。
「ワシらはこれで生きながらえておるんじゃ、よそ者は口を出さんでくれ。」
私は何も言わずに家を退去し、適当なボート屋を訪れた。
1隻借り入れる交渉をすると、店の旦那が言う。
「気をつけてくだせえよ、凶暴な魚がおりますから。」
私は大きな魚について話を聞くと、店主の顔色がみるみる悪くなった。
「だんな、まさか、スネークヘッドをお独りで退治しに行くつもりじゃないでしょうね?」
「無謀です、何人もの釣り師がやられています。」
「無理は言わねえ、辞めときなせえ。」
私はにっこりと笑うと、船を出した。
船を出すと早速小魚が襲いかかる。
私は釣竿を両手に持ち、その先端から伸びたLINEに15号の重りをつけ、これを魚に打ち付ける。
返す釣竿で後ろから襲ってくる魚にも打ち付ける。
これを両の手で繰り返す。
数十匹はやったであろうか、ついに本命がやってくる。
スネークヘッドだ。
釣竿のラインをムチのように振り、魚が襲いかかってきたのを交わすとともに、ラインの先端に付けた針を突き刺す。
この針は返しが付いていて、1度刺し込むとそう簡単に抜けなくなる。
私はリールを巻き、魚を右へ左へ泳がせ、弱らせる。
相当弱まったところで、ボートの上に打ち上げた。
こうなってはもう何も出来まい。
戦いは終わった。
私はポートを操り、ボート屋に戻る。
ボート屋の旦那が驚愕した顔で待っていた。
「だんな、まさか……やったんですかい?」
私はのびた大魚を肩に担ぎ、村長の家へ向かった。
そして、村長にもう問題ない、と言い、大魚を床になげ置いた。
村長は信じられないと言った顔で魚を見つめた。
私はこれでもう大丈夫か?と声をかけ、立ち去った。
立ち去る私の背中から、村長が声をかける。
「もし、旅の方、お礼を、お礼をさせてください」
私は何も言わずに右手を上げ、背中で別れを告げた。
「せめて、お名前を……」
私は足を止め、一言口を開き、また歩み出すのだった。
「私の名は、釣吉 万太郎(45)」
続く。
続くのこれ?
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