風邪っぴき万太郎です。
Gだ。
よし、寝るか、と、寝床に入ろうとすると、視野の端に違和感を覚えた。
普段そこに何も無いはずの壁に、黒い何かがうごめくのを感じた。
私は目の焦点をそちらに向ける。
Gだ。
普段釣りなどに行くのであるから、フナムシなど似たような生き物は見慣れたものである。
イソメであろうと、虫餌も手慣れたものであるはずだが、やはりGはGである。
それをGだと認識した途端、目は開き、歯を食いしばり、肩はこわばり、背中は凍りつき、足に力が入った。
動くなよと願うものの、見たくないという本能に似たものも芽生え、ここで退治しなければという責任感もある。
誰かが退治してくれれば、という他力本願が脳を支配する。
しかし、いい歳だ。
誰かを呼ぶというのもあまりに格好のつかないものである。
このような葛藤により、私からGへの一方的の睨み合いがしばし続いた。
願いは叶うものである。
にゃー、と声がする。
私は声のした方へ目を向ける。
社長だ。
変な格好をしているが、助けに来たのだろう。
私は礼を言い、ジーのことを社長に伝え、対処を頼んだ。
「にゃーん」
何を言っている、私は社長ではない、と言っているようだ。
私も何を言っているかわからず、その恰好はとてもいいが、社長であることを確認する。
「にゃー」
社長など知らん、と言っているようだ。
私はよくわからなくなり、この際、社長かどうかはどうでもいいが、Gをよろしくお願いしたい旨を伝えた。
「んなー」
Gのことなどどうでもいい、今日のご飯をもらっていない、はよよこせ、と言っている。
私は助けに来たわけでは無いのか、ということを確認する。
「にゃーん」
助けに等来るわけないだろう、早くご飯、と言っている。
私は、何を突っ込んでいいのやらわからなくなり、戸惑い、社長を凝視する。
すると、社長がにゃー、と言いながら今まで見たことのないような速度で私に襲い掛かってきた。
これと同時に、視界の外からGもこちらへ飛び掛かってくる。
私は顔を伏せ、声にならない叫び声をあげた・・・。
その次の瞬間、目を開けると、耳元で、携帯のアラームが鳴っていた。
朝だ。
どうやら夢を見ていたらしい。
ぐったりした寝起きの体を起こして、周囲を見渡す。
夢だけど、夢じゃなかった。
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