2017年5月9日火曜日

メジナの供養

どうも皆様おはようございます。
万太郎です。


 海老に食らいついた魚を捕獲した場合、それは速やかに供養されるべきである。

太古より供養とはすなわち食すことだ。

私はこの供養に関しては専門ではない。

だが、小さい組織の中では様々なことしなければならない。

供養には様々な方法があるが、本日の供養について思いめぐらせ、一つの方法に思い当たった。

今回はあれでいこう。




 まずはメジナをまな板にのせる。

右手に包丁を持ち、魚を前に神経を集中させる。

大きく、腹の底まで存分に息を吸い、ゆっくりと、少しづつ、腹の底に溜まった空気押し出すようにしっかりと吐き、絞り出す。

すべてを出し終えたらそれに栓をするように息を止め、目を閉じ、全身の皮膚から周囲の空気を感じとる。



 ここからが正念場だ。

周囲の空気から寿の念だけを抽出し、自らの体に秘める。

その寿の念を体の中で圧縮し、言霊と印に変換する。

寿力を持った九字を唱え、両手で印を結ぶのだ。

刃の印。

鱗・包・丁・斜・押・当・削・取・全!

私の体からその寿の念がメジナへと移り、メジナの鱗が溶け出すように流れ落ちる。

何とかうまくいった。


間髪入れずに次の九字と印に移る。

頭・上・刃・入・切・断・腑・去!

ここでの方法はこれに限らないが、今回はこれが最善と判断した。



 ここまでできれば、すでに海老を襲った時の黒い魚魂は消え失せる。

あとは寿の念を送り込み、その魚魂を善とするための作業が残っている。



 下味の九字を唱え、儀式を行う。

胸の前で左手で拳を作り、右手人差し指を刀になぞらえ空を切る。


まずは左から右に空を切り、上下、左下から右上、最後にゆっくりと目の前で止める。

醤・油・酒・味・醂・生・姜・適・量!

そして次に、火の印だ。

沸・騰・加・熱・落・蓋・火・拾・分!



 メジナは魚魂をすっかり入れ替え、見た目にも儀式の前後で別人のようだ。

さらに、その魂に神の助けを呼ぶ水、お神酒を添える。


まだまだ未熟ではあるが、これで、一通りの儀式は終えた。


 この儀式の終わりとともに、次回の護衛の成功を祈る。

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