どうも皆様おはようございます。
万太郎です。
昨日の続き
私はあらゆることに気を張り巡らせて、海老を付けた仕掛けを投じた。
海鳥がいない。
波がやや高い。
フナムシが2cmの感覚を開けてひたなぼっこをしている。
フナムシは暖かくなってきているというのにふらふらとしているように見える。
フナムシに何事かと声をかけてみると、腹が減って動けないという。
私はマキエを少し投げてやった。
フナムシの笑顔に右手で答え、いつも通りの護衛に移る。
そのまま護衛を続けていると、先ほど隊列を組んでいた中で一番大きなフナムシがあいさつに来た。
マキエの礼だろう。
私は素知らぬ顔で、特に気にしなくていい、貴様らのことは好きではない、と目を合わせずに告げる。
その大きなフナムシは何度も礼を言いながら隊列に戻っていった。
5:30。
背中のゴルフ場から大きな太陽が顔を出す。
この時期の日差しはとても強い。
矢のような紫外線が降り注ぐ。
背中に太陽からの強い視線を感じながら、聞き覚えのある轟音が響き渡り、しばらく後、猫の後を鉄郎が走っていく足音が聞こえる。
あいつ、そういば飛べたよな…。
朝起こさずに置いてきたことに安堵し、今後も朝起こすのは辞めようと心に誓った。
この日は一歩間違えれば、半そででもいいくらいの気温だ。
先程のフナムシの隊列は間隔を1cmに狭め、列幅は倍になり、その数は4倍ほどに増えていた。
先程礼を言いに来たフナムシは随分大きな群れの長だったようだ。
しかし、私には関係ない。
今日はウキがふわりと沈み、海老を脅かされることが何回かあった。
もうそろそろさすがに危険だ。
視界のフナムシがどんどん増えていることが気になり、横目でそれを見た次の瞬間。
ウキが沈んだ。
しまった。
私は力強く竿を振り上げる。
沈んだウキは浮かび上がってくるどころか、ラインに合わせて沈みん込んでいっている。
しかし、私には策があった。
ラインを力ずよく、引っ張る。
今だ!
危なかった。
変わり身の術だ。
狙われた海老をぐにゃぐにゃしたわからないものに身を変えたのだ。
しかし、この術は大変な労力を伴う。
私は肩で息をし、呼吸を整える。
しかし、海老の護衛は続けなければならない。
額の汗を拭い、ふらふらする脚、力の抜けた腕で仕掛けを海に投じる。
ウキはよろよろと飛び、仕掛けが海に沈んでいく。
そんな体で護衛ができるわけがない。
魚が海老に…。
海老は成す術なしだ。
その時だ。
だんな、あぶねえ。
先ほどの大きなフナムシが魚にとびかかる。
しかしフナムシが水中で自由に動けるわけもなく、魚に蹂躙される。
フナムシーーー!!
私は目を見開き叫んだ。
私は片足を引き釣り、片手に竿を持ちフナムシに駆け寄る。
魚にボロボロにされながらフナムシはつぶやいた。
だんな、これで貸し借りなしでさ…。
涙ながらにフナムシを抱き起す。
ばかやろう、貸しだなんて思ってない、むしろこれで借りができてしまったではないか、と叫ぶ。
何度もフナムシと呼び続ける私の想いを冷たくあしらい、フナムシはそこで、完全にこと切れてしまった。
その後、私は茫然自失になりながらも護衛を続け、何とか被害0にとどめる。
フナムシ…。
すまない。
お前の犠牲は決して無駄にはしない。
私は鉄郎が後ろで猫と遊んでいるのを無視し、悲しみの中で帰路についた。
海老被害 ゼロ
フナムシ気持ちワル、ボーズ。
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