2018年11月7日水曜日

09月17日 若洲海浜公園 ~白ジャケット~


どうも皆様おはようございます。

万太郎です。


    沖縄に遠征してから数日。


成り行きで普段と違う釣具屋に赴いた私はある商品を手に取っていた。

「グレにこれだ。」

以前、「チヌにこれだ。」を購入したことがあったが、護衛部隊である私には効果覿面。

チヌを全く寄せ付けなかった。

やってみるか、と、「グレにこれだ」をカゴに入れた。



  沖縄でのアカイソメ護衛もそこそこに成功した私は半月ぶりに若洲へ向かった。

私の不在がどれほどの影響があっただろう。

季節も季節だ。

護衛隊員も忙しくなり、ど、の付く素人まで駆り出されるのがこの季節だ。

私は不安の中、朝日が昇る前の暗闇を若洲へと急いだ。


    久々の撒き餌作りに水を入れすぎてべたべたになる、いつもの電気浮きを入れ忘れ特大のものを振り回すことになるなど自らも失敗を重ねる。

そんな失敗の中でも、海老の護衛はしっかり務め、私の海老は齧られることもなく安定していた。

電気ウキを使用するのも久しぶりだ。


もう少しすると、この電気ウキが人口磯に並ぶようになる。

壮観だ。

都会のホタルはこんなところに顕在しているのだ。



    空が明るくなり始めると、人がぽつぽつとやってくる。

それと同時に泳いでいる魚の群れが見えるほどになった。

今日はやけに賑やかだ。


私の10m隣に、ジャケット、防止、サングラスを装備した二人組みが釣座を作った。

一人は赤ジャケット、もう一人は白ジャケットだ。

ぐずぐずと話したり、荷物をいじりながら一向に仕掛けを海に落とさない。

主に白ジャケットが赤ジャケットに話し、時に魚の群れを指差し何か伝えているように見える。

こういった輩はだめだ、と私の経験が黄色信号を灯す。

私からすると、いったい何をしているのだろうと思うくらいにぐずぐずと仕掛けを作るのだ。

しっかり私が様子を観てやらないとすぐに海老やイソメの損害を出すはず。



    私の心配をよそに、ぽんぽんと撒き餌を投げ、仕掛けを投げ入れた。

私は横目で隣のウキに集中した。

私くらいに経験を積むと、自分のウキを見ずとも、護衛等いくらでもできるのだ。

そして、白ジャケットがそうそうにやらかす。

ウキが沈み込んだ。

チヌ、さほど大きくはない。

一匹目。

だが、私には経験でわかる。

この類の連中がこれで済むはずがない。

助けてやろうとは思うが、彼らのスタンスをしっかり把握しなければ、教えたことが図星を指し逆上しかねない。

横目で見ていると、仕掛けを投げた傍からウキが沈み込み、海老被害を出している。

チヌではない、ボラだろうかかなり群れて泳いでいる。



    それから小一時間、白ジャケットはコンスタントに海老被害を出し、出し続けている。

という私は、言うまでもなく、被害ゼロだ。

撒き餌を撒ききった私は、ゆったりと竿を納め、リールを片付け、周りに点在した撒き餌を流した。

そのまま帰ってしまうこともできたが、やはり、かの白ジャケットに、護衛の流儀を一つ教えておくのが私の義務なのかもしれない。

私は意を決して白ジャケットに話しかけることにした。



  ”おはようございますー、随分釣れてますね、仕掛けどんなのお使いなんですか?”

少々驚いたように白ジャケットは言う。
「そもそも何を狙っていたのですか?」

”え、グレとか…、チヌとか…?”

「フッ、でしょうね、私はチヌなのですが、あの魚の群れが見えますか?あの下のあたりにタナ2ヒロ3ヒロあたりにいると思うんですよ、私ここ初めてなんですけどね。」

”あ、へー、そうなんですか、エサは・・・、オキアミ、ですよね”

「そうですね、まあ、普通の。」

と、言いつつ、仕掛けを海に投げこむ。

「あの10mくらいのあの辺りに駆け上がりがあって、あの辺はタナもう少し深めでもいいんじゃないかと思うんですけどね。」

”…なるほどー、ありがとうございました。では、お先に失礼します。”



 自然の厳しさをがつんと教えてやった。

 少々厳しかったかもしれないが、仕方のないことだ。

今回私はこの「グレにこれだ」に助けられたような気がする。

私は自然の難しさをかみしめながら、家路に着いた。



ボウズ納竿。グレにこれだ、は漬けこんじゃ、いけない気がするんですよ、どうでしょう。

2018年10月4日木曜日

08月26日 沖縄本部港 釣り ~オヤビッチャかわいい~


どうも皆様おはようございます。

なんくるないさ@万太郎です。



    
  思い返せば6月3日(日曜日)。

8月に沖縄に行こうと家族の誰ともなく言い出した。

昼休みは自製おにぎりを食い、釣具もケチって、欲しいものも我慢をし、貯めたお金だ。

欲しい釣竿リールもそこそこに、モノよりコトか、と自分を納得させる。

なにより沖縄の釣り経験値は、若洲の10倍以上になるはずだ。

  だが問題はまだある。

私の副業の職場は8月末決算を迎える。

8月27日というギリギリのタイミングに果たして休みが取れるのか。

約3ヶ月も前の申請であれば、どさくさにまぎれて通るであろう、という不安の元に申請書を提出した。

ほどなく深海魚のような顔をした女性上司から承認が出た。

  いざ、出発前日になると判を押した当の上司に「え、休み?」などと怪訝な顔をされたが、ホワイトボードに「休み」と書きつけ、そそくさと家路に着いた。

どこに釣りに行こう、どこに泳ぎに行こうと胸を高鳴らせていた。

しかし、週間天気予報の沖縄の欄にはスケジュールの3日間とも大きな傘と風マークが踊っていた。

私の沖縄釣り行は、はやくも絶望的、と思われた。




  沖縄初日、天気、雨、風速10m/s。

台風一過で全国的に晴れているものの何故か沖縄だけが暴雨暴風に見舞われている。

しかたなし、国際通りをうろうろした。



いざ、宿までの道のりでは穏やかな海が見受けられたため、昨年同様、フィッシングステップで釣竿を借りる。


2本借りると、エサ代含め5000円と言われ、安い釣り竿なら買えるのではないかと若干後悔する。

しかし、レジ奥のタマンダービーのホワイトボードに、ロウニンアジ131cm、29kgの文字を見つけ俄然テンションを上げる。


本部と言えば今回の宿泊地の近くだ。

とりあえず宿だ。

宿での情報では今日は午後からはビーチを閉鎖するほどの強風なので、海には近づかん方がいいと日焼けばっちりのお姉ちゃんに言われた。


本日はあきらめざるを得ない。

明日の予報も雨、風。

釣りも海も絶望的になり、酒を煽って寝ることとした。





 二日目、天気、雨曇り、風速8m/s。

午前中はプールなどで、お茶を濁すが、午後から風は強いながら晴れ間ものぞく。


もう明日には帰りの飛行機に乗らなければならない。

チャンスを逃すわけにはいかない。

私は普段見せないような真剣なまなざしを作り、釣りに行きたいと懇願した。

すると、嫁が笑顔で釣りに行ってこいと言う。

流石に10年以上連れ添った間だ。

私がどれだけ真剣かはわかってくれたようだ。

私は事前に調査しておいた釣り場にあたった。

本部。

波は高く、波が港にぶつかる確度によっては釣りをしてても波しぶきが掛かるほどだ。


波を眺めていると恐怖さえ感じる。

こんな荒れた海で魚が釣れるとは思えん、が、昨日のホワイトボードが頭をよぎる。


仕掛けを入れるとかなりの深さがあることがわかる。

何度かの通り雨の中、釣りを続けること3時間。

この子達の上陸が確認できた。



可愛すぎる。

また、大きなあたりも二つほど確認した。

こんな大荒れでも魚が食ってくる沖縄はやはり恐るべしだ。

明日も微妙な天気予報。

酒を煽って一日納竿。




 三日目、奇跡の好天。風速3m/s。

風も昨日と比べるとほとんどない。


釣りか、海か、と頭で繰り返し出立の準備をする。

宿のチェックアウトを早々にし、車に乗り込み、子供達に釣りか、泳ぎたいか聞いてみる。

子供は泳ぎたいというであろうか。

すると、あらぬ方向から「三日目はおきなわワールドだから。釣りは昨日行かせてあげたでしょ。」と聞こえた。

嫁だ。

顔が本気だ。

なぜ、天気のいい日に沖縄ワールドなのか、おおいに疑問に思ったが、10年以上連れ添った間だ。

ここで不平をこぼしたら、この先1年文句を言われ続け、釣りに行けない日々が続くであろう。

半日の沖縄と、1年の若洲。

釣り経験値で言えば沖縄のほうが上かもしれない。

そうだ、ここで言わなければ一生後悔する・・・。



怖くて言えるわけがなかった。

こうして沖縄旅行の幕は閉じた。





  メールの転送欄には会社からの確認メールが飛び交っていた。

翌日、会社へ向かう。

忙しい時期にすみません、と皆にお土産を渡していると、「あ、沖縄?来週わたし物件視察(あそび)で行くんで仮払いお願いね。」と深海魚のような上司がすれ違いざまにぼそりとつぶやいた。



釣り好きにとって好天の沖縄ワールドはちょっとした拷問でした。助けてマングース!

2018年9月19日水曜日

ピカチュウ浮き ゲットだぜ。こうかはばつぐんだ。


どうも皆様おはようございます。

コイキング@万太郎です。



今回はピカチュウのウキを作っていこうと思う。

いくつかのウキを作ってはきたが、ガンダムにしろ、スライムにしろ魚に対する決定力に欠けていた。

私もよくぞここまで忘れていたものだ。

雷属性。


どこの世界でも魚は雷に弱いものなのだ。

これは全世界のお約束と言っていい。

魚類含む水属性の者達はこのウキの製作により一網打尽にすることができるであろう。




材料


①卵形のスチロール材(42円)、
②直径3mmのプラ棒(30cmくらい)、
③重めのガン玉いくつか。
④スイベル(っぽいもの)
⑤ゴム管(ウキボトム、プラ棒に付くもの)
⑥お好みのピカチュウ(ガチャで300園程度、運も必要)

工具


⑦ヤスリ(紙ヤスリでよさげ)
⑧ドリル(発泡スチロール穴あけ用なくても)

すべて東急ハンズと釣具屋でそろう。

②は30cm程度なので実質は30円程度。

⑥以外であればなんと原価100円以下で棒ウキが作成できる。



作成方法



卵形の発泡スチロールのてっぺんをピカチュウが乗れる様にまっすぐに削る。
       

大まかにカッターで削ってしまってから削ってもよい。

綺麗に削れたらピカチュウを乗せる前に油性マジックで着色する。

海に投げてよく見える色、黄色やオレンジ、赤などが望ましい。

東急ハンズで購入した発泡スチロールはあらかじめ中央に穴が空いているので、プラ棒に接着剤を塗ってから通す。

ピカチュウも接着剤を塗りつけ、固定する。


ピカチュウを乾かす間に、ウキのボトムを作成する。

ガンダマをお好みで接着する。


少々見た目がよろしくないので重みのあるものであればもちろん何でもよい。

それとゴム管とスイベルを同じくくっつける。

ゴム管とスイベルは道糸の付く部分なので、くどいくらいに接着して良いかもしれない。


投げた時にここがすっぽ抜けて海のもくずとなったウキは数知れず。

ここまでくれば、ほぼ出来上がりだ。

1.5Lのペットボトルなどに浮かべて発砲スチロールを削り浮力、傾きの調整をする。



完成。



としたいところだったが、ここでやめては世界中のピカチュウファンから大クレームが来るだろう。

ピカチュウだ。

光らねば。

ということで、急遽ケミホタルを取り付ける場所を考える。

完全に後付。

できる限りピカチュウのフォルムを隠さないような位置を考え、裏に穴をあけた。

本音としては余計なものをつければつけるほど絡みやすくなるのでスルーしたかったが、しょせんネタウキ。

出来上がりがこちら。


イメージとちょっと違う。

しかし、これで、どんな魚も裸足で逃げ出すこと請け合いである。

こうかはばつぐんだ!

絡みやすさもばつぐんだ!


釣果は後ほど。

面白かったら拡散お願いしますm(_ _)m。



他のウキ記事はこちら。

ガンダム浮き


スライムウキ

2018年9月6日木曜日

08月19日 若洲海浜公園 ~ハゼ~


どうも皆様おはようございます。

穴釣り@万太郎です。


    (仮)泉君の強襲から一週間。

「明日も若洲行きますぇ。ルアー竿持っていきますよって。おこしやす。」と本音とは裏腹の気持ちを京都弁に込め、前夜に書き込みを入れた。

まあ、来ないだろう。

念のため、釣竿を一本多く持ち、ルアーをいくつかカバンにいれ、お土産お持ち帰り用の発泡材クーラーボックスを積んで若洲に向かった。



  お盆休み中は3回は釣りに行く予定が、終日風が強く、結局1日しか釣りにいけなかった。

その貯まったフラストレーションを吐き出すかのように撒き餌を混ぜる。

楽しい。

仕掛けを作る間の胸の高鳴りはいつ来ても変わらない。


撒き餌を撒き、仕掛けを投じる。

結局やってることはあまり変わらない。

上達ってあるのか。

そんなことを考えていると、ウキが不自然な動きをする。

カイズ。


引きも余りなく、やる気が余り感じられない奴だった。

私は、もう一度チャンスをやる、その時は本気で相手にしよう、と言い渡し、海に放流した。



  隣でルアーを投げまくってる方がいる。

ルアーであれば、そう雑魚が来ることはあるまい。

だが、あれ、釣れるのか。

FFも散々やった。

私でもいけるかもしれない。

でも・・・。

撒き餌撒くのも混ぜるのも楽しい。

ウキを眺めるのも楽しい。

時間がたりねえなあ、と考えていると。

よそ見をしているとひったくられる様な引き。

慌ててあわせる。

この引きは。

重い。

突っ込まれる。

少々強引に浮かせる。

浮かない?

重い。

ラインブレイク。

ハリスの先が無くなっている。


奴か。

目を閉じ、空を仰ぐ。

まさか、先ほどの奴が。

私は思考をめぐらせ、先ほど奴と戦った一瞬一瞬を思い出す。

そう、あれはわた「部長、部長」。

思考を遮るかのように素っ頓狂な声が後ろから聞こえた。

(仮)泉君だ。

また来たのか。

「部長がルアー用意してくださるってんで、こりゃあ来なきゃバチが当たると思い当たり、すっ飛んで参りましたよ。ふひひ。」

しまった、京都の繊細な駆け引きは彼には通用しなかったようだ。

先ほどバラした想定70cmの黒鯛に後ろ髪を引かれながら、ルアーという物の説明をすることにした。

ルアーは疑似餌であって、その挙動を弱った魚に見せることでフィッシュイーターを捕獲しようという画期的な釣り方だ。

いかに魚に見せるかということに重点が置かれるので、海老やイソメの護衛とは全く異なる。

とにかく、魚をイメージして欲しい。

私も慣れないながら一度手本を見せ、そのまま竿を渡した。



  不慣れな様子でルアーを投げ始めるが、やはりちょくちょく根がかるらしく、リールを巻いている時間より、地球と綱引きをしている時間のほうが長く見える。

余り見ているのも失礼かと思い、助けを呼ばれるまでは自分の釣りに専念することにした。

隣からは「よし」、とか「来た」とか聞こえるが、助けを求めているわけではなさそうなので放っておいた。

しばらく自分の釣りに集中し、ふと投げようとした撒き餌の杓を(仮)泉君が持っている。

撒き餌で魚を集めて欲しいと思ったのだろう、確かに寄っては来るかもしれないが、基本はシーバス狙いであり、シーバスは回遊魚だ。

あまり意味はないかもしれないと、その旨を伝えようとするも、(仮)泉君は自分のルアーに撒き餌を撫で付け始めた。

なるほど。

そう、誰しも考えることだ。

私もルアーにイソメを付け、投げたこともある。

しかし、何でも経験だ。

私は黙って見守ることにした。

すると、(仮)泉君は撒き餌まみれのルアーを投げず、そのまま岩の切れ目の穴にルアーをゆっくり落とし始める。

私は黙って見守ることにした。

「きた、きましたよ、カニ、大量です。」

どうやら早々に飽きたらしい。



  穴釣りをするにはルアー竿でも少々長い。

私は秘蔵のカップホルダー竿を見せ、その使い方を享受した。


「すごいっすね、インスタ映えばっちりっすよ。」

おそらく思っていないのだろう、先ほどとは打って変わっていぶかしげに独り言のように言い、鈎に海老を付ける。

基本的にはカニが釣れる。

だが、4回に1回くらいハゼが釣れるのだ。


きゃっきゃとカニとハゼを釣り、別々の袋に入れていく。

「こっちがカニ袋で、こっちがハゼ袋っす。ふひひ。今日はカニは要らないのですが、集めておきます。」



楽しそうで何よりだが、そんな小物は私が相手にするようなやつではない。

(仮)泉君に任せておこう。



  「万太郎さん、ハゼきました。いやあ楽しいっすね。」

私は潮の上下に注意しながらラインを調整する。

時に繊細に、時に大胆に。

そして、来た、ハゼだ!

私は得意満面の顔で(仮)泉君にアピールする。

「やりますね、万太郎さん。」

気づけば、私達は計20匹ほどのハゼを釣っていた。

ハゼは(仮)泉君のお土産にしようと、彼のお土産ボックスのビニールに入れていた。

もうそろそろ片付けますか、と気を抜いた瞬間、私の手からハゼの一袋が岩の間をすり抜けていった。

「大漁でしたね。釣り部安泰ですよ。一生食えますね。」

と、(仮)泉君は楽しげに穴の中を覗き込んでいる。

私はそそくさと、持ち帰るつもりがなかったであろうカニ袋をハゼ袋の代わりに入れ、発泡スチロールのクーラーボックスの箱を閉じた。

穴釣りに移行してたので、片付けはほとんどなく、お土産ボックスを(仮)泉君に渡し、それぞれの車に消えた。

帰りの(仮)泉君のあおり運転は、それに気づいてのことなのかは不明である。




いやあ、ハゼ釣り楽しいです。オキアミあれだけ投げてればハゼも大きくなりますわな。

2018年8月25日土曜日

08月12日 若洲海浜公園 ~釣り部~


どうも皆様おはようございます。

部長@万太郎です。


    8月12日午前6時。

神経を研ぎ澄ませ、海老の護衛にあたっていると、後ろから声が聞こえる。

「部長、部長。」

私はぎょっとし、振り向くと、そこに(仮)泉君が立っていた。



  殲滅隊とは離れた組織になってしまうが、私が副業で仕事をしている場所で釣りの話をすると、幾人かに連れてって欲しいとねだられた。

(仮)泉君はそのうちの一人である。

釣り部が結成され、私がその部長にと祀り上げられたのだ。

悪い気はしない。

祀り上げられたとはいえ、部長は部長だ。

だが、実力のほどには正直自信はない。

人の面倒を見れるほど知識も経験も足りない。

逃げたい。

私は、行きましょうと言われては明日は風が強そうです、今週はどうですかと煽られては雨が降りそうです、今度こそと言われては嫁が怒りそうです、などと言い訳を捏ねくり、延期に延期を重ねた。

するといつのまにか、会社のコミュニケーションツールに釣り部のフォーラムが作られているではないか。

もうそろそろ逃げることが適わなくなってきた。



  8月11日。

お盆に入って少々。

私は寝る間際に釣り部フォーラムに8/12に釣りに行く旨と、急ですみませんと謝罪の意を書き込んだ。

お盆だ。

まさか誰も来ないであろうと鷹をくくり、床に付いた。



  12日。

午前4時30分。

若洲に到着すると、大雨が降っている。


夏によくある一時的なものだろう。

車で一時雨宿りをしていると15分程度で雨は弱まった。

これで、今日は釣り人は少ないであろうと踏み、喜び勇んで人口磯へ向かった。

満潮と雨が重なったためであろう、磯に面した道路が完全に水に浸っている。


膝までズボンをまくり、覚悟を決めて道路を渡ると、しっかり膝上のズボンが濡れる程度の深さになっていた。

こんなでは更に人は来るまい。

やっと人口磯にたどり着き、さっそく撒き餌の準備をし仕掛けを作り、海へ投げ込んだ。

昨日も夜まで雨が降っていた。

今日も午後から雨予報だ。

私は人気のない人口磯でほくそ笑んだ。

釣り場独り占め。

と、ニヤついていると後ろからのまさかの(仮)泉君。


(仮)泉君は若干空気の読めない子だ。

実は先輩なのだが。

私は平静を装い、(仮)泉君、よくここがわかったね、などとしかめっ面で応えた。

(仮)泉君は私の気持ちなど全く解さず、「目が覚めちゃったんで来てみました。」などとありえないことを言う。

お盆入りたての朝5時だ。

目が覚めるわけあるまい。



  私は、竿を一本しか持ってきていない旨を伝えた。

そして、部長の面目を保つため、海老の護衛について、とつとつと語った。

海老を護衛するための心得、心構え。

そして実践。

小さい魚に食われることはあっても、大きな魚に食われることはただの怠慢である。

大きな魚は見てからでもしっかりかわせるからだ。

と、私がくどくどと話していると、(仮)泉君は「これが仕掛けですね、一本もらいますね。ふひひ。」と、勝手に仕掛けカバンからを引き抜いて、手釣りでカニ釣りを始めた。

人の話を全く聞いていない。

私は改めて護衛について語る。

犠牲を出さないことへの執着、海老一粒一粒への優しさ、こだわり抜いた撒き餌。

「おお、カニが一度に三匹付いてきましたよ、万太郎さん、カニマンション発見です、ふひひ。」


万太郎3年の魚をくぐり抜け続けた努力。

「うわ、フナムシきもくないっすか、うじゃうじゃじゃないですか。カニとフナムシどっちが強いんですかね、ひひひ。」

そして、丹精こめて1から手作りしたウキの数々を披露し、説明する。

「こないだの出張、実はお客さんと会えずだったので、そのまま帰ってきたんすよ、へへへ。」

ギマとの戦いの数々。

「釣りしてる人って、釣りしてる時、何考えてるんでしょうね?」

いなくなっていった海老、イソメについて涙ながらに語った。

「あれ、ウキ沈んでないですか、来てますよ!」

私は我に返るとウキを探した。

ない。

慌てて合わせを入れ、あたふたとリールを巻いた。

「まじっすか、さすが部長っす!」

網だの、引っこ抜くだのと慣れない様子を晒しながら、魚を陸に揚げた。

メジナだ。

「こんなのが釣れるんすね、さすがっす。」


私は、まるでいつもの事だと言わんばかりの表情で、こんなのは小さい方だよ、と目を泳がせた。

27cm。



  その後、リールの使い方などを教え、(仮)泉君はカニ2匹とハゼ2匹をお土産にし、駐車場で別れた。

帰りの運転中、後ろの車に煽られていると思ったら、(仮)泉君だったことは言うまでもない。




(仮)泉さんにはこのブログの存在はもちろん話してません。ばれたらどうしよう。先に謝っときます。すみません(仮)泉さん。周りには内緒で。

2018年8月7日火曜日

07月15日 若洲海浜公園 ~遅刻~


どうも皆様おはようございます。

ジャペーン@万太郎です。


  日本の国民は時間感覚に優れた民族だ。

何をするにしても時間ぴたりだ。

この日本に住んでいる方々はそれが当たり前になっているであろう。

しかし、ちょっと飛行機に乗るとそれがすぐにわかる。

電車だってまともには来ないし、約束であっても遅く来ることが当たり前どころかそれが礼儀と言う国だってある。

かく言う私も日本人であるが故、遅刻に対しては大変な罪悪感であったり、嫌悪感を覚える。


  今日は久々に釣りができる日だ。

雨が降り、風が吹き、嫁が怒り、子供が騒ぐ。

一週間に一度程度の、3,4時間。

時間にすると、168時間のうちの3,4時間だ。

しかし彼らは私の人生の2,3%の時間の楽しみすらも奪うのだ。

それをすることで大枚はたくと言うのであれば、遠慮もしようがせいぜい、餌代、駐車代だ。

1000円いくかいかないか。

そんなプライスレスな時間をようやく手にした、この日。

まさかの寝坊だ。

妙な緊張感からじわりと目が覚め、目覚まし時計に目をやると予定の時間を1時間過ぎてしまっている。

私は半べそをかきながら、急いで準備をし、車に飛び乗った。

普段はシミュレーションをしながらのんびり踏むアクセルも、今日はその足に力が入る。

嫌がらせをするように赤い目を光らせる信号。

私はふざけながら信号を渡る夜を明かした若者達を睨みつける。


  駐車場もいつもより混んでいるように感じられ、奥の空車スペースを確認せずに、空いている場所に車を停車させる。

荷物を持ち、小走りで人口磯に向かう。

若洲の空気から遅刻した異物を押し出すような圧迫感を受ける。

すれ違う夜を徹したルアー勢が、私を白い目で見る。

今頃何しに来た。

若洲の満潮の潮で溢れた海水が歩道を満たし、私の行く手を阻む。

かろうじて、水の途切れた場所を見つけ、人口磯にたどり着く。


海に目をやると、行き交う波もよそよそしく感じられる。

私は遅れた時間を取り戻すべく、急いで仕掛けを準備し、海へ投げる。



  前回に引き続き、ふさふさの房掛けだ。

一本の鈎に5,6本のイソメを付け、浮かれる私を付けられたイソメもが白い目で見ているようだ。

今日は混むだろうと思った人口磯にも何故か人目が無くなる。


魚も私に見向きもしない。

思ったより時間の進みが遅く感じられる。

みなに冷たく当たられている気がするからかもしれない。

徐々にその理不尽さに憤りを覚え始めた私は手荒にルアーを巻き、力任せに竿を振り、仕掛けを投げつけた。



  浮きは一度も沈むことなく、イソメにも何の異常も無い。

皆、遅刻した私になど見向きもしない。

遅刻した者には人間も魚も厳しくなる。

それがこのくそったれな日本だ。

私は遅刻がそんなに悪いことなのかと、憤りを感じながら釣竿を片付けた。

納竿。



  帰宅して、目覚まし時計を見ると、おかしい。

1時間進んでいる。



私は深く考えないことにし、当り散らした釣竿に手入れをすることにした。



ぼーず。すんません眠いっす。ぼーず。

2018年7月18日水曜日

06月24日 若洲海浜公園 悪魔の証明 ~虫閲覧注意~


どうも皆様おはようございます。

ふさふさ@万太郎です。




   私は社長のもふもふとしたお腹を触ってみたり、口周りの髭の付け根をマッサージしながら言った。

本当です。

社長はうざったそうに体をひねっているように見えるが実は、おめえの言ってること信じられるか、ブツを持って来い、ブツを。と言っているようだ。


本当です、魚は40cmはありました、と私は階下の迷惑も考えず集合住宅の畳を叩いた。

しかし、社長はいかにも面倒くさそうに後ろ脚で首の根元を掻くだけだ。

何を言っても無駄なのか。

何とかしてこの自分にとっての大ニュースに社長を飛びつかせたかった。

信じて欲しかった。

そう、6月24日早朝、6時30分・・・。




 昨日まで降り続いた雨、昨夜21時過ぎから雨は上がり、今日の朝からは風もやみ、朝のこの数時間のみ、釣りにいける。

朝4時、外に出てみると、小雨。

車に乗るのにも躊躇したが、振り続けるようであれば、若洲公園の車中で寝るか。

そう思いながら車を走らせた。

駐車場に車を停めると雨はやんでいた。

釣座を確保し、仕掛けを作る。

今日の餌は決まっている。

前回見かけた、イソメ房掛けだ。


イソメ房掛けだと、どのような魚がやってくるのか。

少なくともサッとオキアミよりは何かが起きるかもしれない。




  本当です。

来たんですよ、魚が。

50cmはあったかもしれない。

社長は飯も食って、少々のんびりしていたところであったせいか、全く取り合ってくれない。

私ははたと思い当たり、言葉でわからないようであれば絵を書いてみようと試みた。


魚の絵は単純そうでなかなか難しい。




  5:00。
  
  仕掛けは海に放り込んだが、雨が降ったり止んだり。

寒い。

何度かくじけそうになり、雨宿りに戻りかけた。

しかし、戻ったところで何をするでもないと思いとどまり、竿を持った。

今日は房掛け。

撒き餌をしないので、誘いは入れつつも手持ち無沙汰だ。

寒い。

それにしても、雨も降っているというのに、周りの釣り人が帰る様子はない。

風さえなければ、波さえなければ、釣りをするのだ。




  社長は私の書いた絵になど何の興味も示さず、近くにいる私がわずらわしいのかうろうろしている。

私は社長の興味を惹くべく、追いかけては、絵を書き直し、手でそのサイズを示してみた。


いまいち反応がないので、数で勝負してみよう。
 
駄目だ。

全く興味を示さない、飛びつかない。

いないもの、いなくなった物の証明はできないのだ。

悪魔の証明だ。




  6:15。

隣に、女性を連れた釣り人が現れた。

女性はフナ虫が苦手なのであろう、人口磯に響き渡る声で悲鳴を上げている。

私は近辺の魚が逃げ出すことを憂い、今までより、遠くへ仕掛けを投げつけた。

そして数分後。

浮きが・・・沈みこんだ。

軽く合わせると、手ごたえを感じたが、あまり大きな引きは感じなかった。

期待をせずにリールを巻く。

足元までラインを引いてから顔を出したのが奴だった。


顔を出した直後突如ラインを引き、大きく泳ぎだす。

竿は弓なりになったが、寸後、魚のテンションを失った浮きが所在無さげに空中に浮いていた・・・。




  一通り社長に説明をした私は、ため息を一つついた。

相変わらず、邪魔そうな落書きには目もくれず、たぬき寝入りを装っている。

このたぬきめ。

そして理解の無い社長に怒りを覚え、落書きで散らかった紙を力任せに握りつぶし、ゴミ箱に投げつけた。

すると今まで、何の興味なさそうであった社長が。


  飛びついたのだった。


  私はその光景を喜びと安堵を持って眺めたのであった。




ボーズ。やり取りが下手くそと言うよりほぼしたことがない悲しみ。ボウズ。