どうも皆様おはようございます。
部長@万太郎です。
8月12日午前6時。
神経を研ぎ澄ませ、海老の護衛にあたっていると、後ろから声が聞こえる。
「部長、部長。」
私はぎょっとし、振り向くと、そこに(仮)泉君が立っていた。
殲滅隊とは離れた組織になってしまうが、私が副業で仕事をしている場所で釣りの話をすると、幾人かに連れてって欲しいとねだられた。
(仮)泉君はそのうちの一人である。
釣り部が結成され、私がその部長にと祀り上げられたのだ。
悪い気はしない。
祀り上げられたとはいえ、部長は部長だ。
だが、実力のほどには正直自信はない。
人の面倒を見れるほど知識も経験も足りない。
逃げたい。
私は、行きましょうと言われては明日は風が強そうです、今週はどうですかと煽られては雨が降りそうです、今度こそと言われては嫁が怒りそうです、などと言い訳を捏ねくり、延期に延期を重ねた。
するといつのまにか、会社のコミュニケーションツールに釣り部のフォーラムが作られているではないか。
もうそろそろ逃げることが適わなくなってきた。
8月11日。
お盆に入って少々。
私は寝る間際に釣り部フォーラムに8/12に釣りに行く旨と、急ですみませんと謝罪の意を書き込んだ。
お盆だ。
まさか誰も来ないであろうと鷹をくくり、床に付いた。
12日。
午前4時30分。
若洲に到着すると、大雨が降っている。
夏によくある一時的なものだろう。
車で一時雨宿りをしていると15分程度で雨は弱まった。
これで、今日は釣り人は少ないであろうと踏み、喜び勇んで人口磯へ向かった。
満潮と雨が重なったためであろう、磯に面した道路が完全に水に浸っている。
膝までズボンをまくり、覚悟を決めて道路を渡ると、しっかり膝上のズボンが濡れる程度の深さになっていた。
こんなでは更に人は来るまい。
やっと人口磯にたどり着き、さっそく撒き餌の準備をし仕掛けを作り、海へ投げ込んだ。
昨日も夜まで雨が降っていた。
今日も午後から雨予報だ。
私は人気のない人口磯でほくそ笑んだ。
釣り場独り占め。
と、ニヤついていると後ろからのまさかの(仮)泉君。
(仮)泉君は若干空気の読めない子だ。
実は先輩なのだが。
私は平静を装い、(仮)泉君、よくここがわかったね、などとしかめっ面で応えた。
(仮)泉君は私の気持ちなど全く解さず、「目が覚めちゃったんで来てみました。」などとありえないことを言う。
お盆入りたての朝5時だ。
目が覚めるわけあるまい。
私は、竿を一本しか持ってきていない旨を伝えた。
そして、部長の面目を保つため、海老の護衛について、とつとつと語った。
海老を護衛するための心得、心構え。
そして実践。
小さい魚に食われることはあっても、大きな魚に食われることはただの怠慢である。
大きな魚は見てからでもしっかりかわせるからだ。
と、私がくどくどと話していると、(仮)泉君は「これが仕掛けですね、一本もらいますね。ふひひ。」と、勝手に仕掛けカバンからを引き抜いて、手釣りでカニ釣りを始めた。
人の話を全く聞いていない。
私は改めて護衛について語る。
犠牲を出さないことへの執着、海老一粒一粒への優しさ、こだわり抜いた撒き餌。
「おお、カニが一度に三匹付いてきましたよ、万太郎さん、カニマンション発見です、ふひひ。」
万太郎3年の魚をくぐり抜け続けた努力。
「うわ、フナムシきもくないっすか、うじゃうじゃじゃないですか。カニとフナムシどっちが強いんですかね、ひひひ。」
そして、丹精こめて1から手作りしたウキの数々を披露し、説明する。
「こないだの出張、実はお客さんと会えずだったので、そのまま帰ってきたんすよ、へへへ。」
ギマとの戦いの数々。
「釣りしてる人って、釣りしてる時、何考えてるんでしょうね?」
いなくなっていった海老、イソメについて涙ながらに語った。
「あれ、ウキ沈んでないですか、来てますよ!」
私は我に返るとウキを探した。
ない。
慌てて合わせを入れ、あたふたとリールを巻いた。
「まじっすか、さすが部長っす!」
網だの、引っこ抜くだのと慣れない様子を晒しながら、魚を陸に揚げた。
メジナだ。
「こんなのが釣れるんすね、さすがっす。」
私は、まるでいつもの事だと言わんばかりの表情で、こんなのは小さい方だよ、と目を泳がせた。
27cm。
その後、リールの使い方などを教え、(仮)泉君はカニ2匹とハゼ2匹をお土産にし、駐車場で別れた。
帰りの運転中、後ろの車に煽られていると思ったら、(仮)泉君だったことは言うまでもない。
(仮)泉さんにはこのブログの存在はもちろん話してません。ばれたらどうしよう。先に謝っときます。すみません(仮)泉さん。周りには内緒で。