2018年8月25日土曜日

08月12日 若洲海浜公園 ~釣り部~


どうも皆様おはようございます。

部長@万太郎です。


    8月12日午前6時。

神経を研ぎ澄ませ、海老の護衛にあたっていると、後ろから声が聞こえる。

「部長、部長。」

私はぎょっとし、振り向くと、そこに(仮)泉君が立っていた。



  殲滅隊とは離れた組織になってしまうが、私が副業で仕事をしている場所で釣りの話をすると、幾人かに連れてって欲しいとねだられた。

(仮)泉君はそのうちの一人である。

釣り部が結成され、私がその部長にと祀り上げられたのだ。

悪い気はしない。

祀り上げられたとはいえ、部長は部長だ。

だが、実力のほどには正直自信はない。

人の面倒を見れるほど知識も経験も足りない。

逃げたい。

私は、行きましょうと言われては明日は風が強そうです、今週はどうですかと煽られては雨が降りそうです、今度こそと言われては嫁が怒りそうです、などと言い訳を捏ねくり、延期に延期を重ねた。

するといつのまにか、会社のコミュニケーションツールに釣り部のフォーラムが作られているではないか。

もうそろそろ逃げることが適わなくなってきた。



  8月11日。

お盆に入って少々。

私は寝る間際に釣り部フォーラムに8/12に釣りに行く旨と、急ですみませんと謝罪の意を書き込んだ。

お盆だ。

まさか誰も来ないであろうと鷹をくくり、床に付いた。



  12日。

午前4時30分。

若洲に到着すると、大雨が降っている。


夏によくある一時的なものだろう。

車で一時雨宿りをしていると15分程度で雨は弱まった。

これで、今日は釣り人は少ないであろうと踏み、喜び勇んで人口磯へ向かった。

満潮と雨が重なったためであろう、磯に面した道路が完全に水に浸っている。


膝までズボンをまくり、覚悟を決めて道路を渡ると、しっかり膝上のズボンが濡れる程度の深さになっていた。

こんなでは更に人は来るまい。

やっと人口磯にたどり着き、さっそく撒き餌の準備をし仕掛けを作り、海へ投げ込んだ。

昨日も夜まで雨が降っていた。

今日も午後から雨予報だ。

私は人気のない人口磯でほくそ笑んだ。

釣り場独り占め。

と、ニヤついていると後ろからのまさかの(仮)泉君。


(仮)泉君は若干空気の読めない子だ。

実は先輩なのだが。

私は平静を装い、(仮)泉君、よくここがわかったね、などとしかめっ面で応えた。

(仮)泉君は私の気持ちなど全く解さず、「目が覚めちゃったんで来てみました。」などとありえないことを言う。

お盆入りたての朝5時だ。

目が覚めるわけあるまい。



  私は、竿を一本しか持ってきていない旨を伝えた。

そして、部長の面目を保つため、海老の護衛について、とつとつと語った。

海老を護衛するための心得、心構え。

そして実践。

小さい魚に食われることはあっても、大きな魚に食われることはただの怠慢である。

大きな魚は見てからでもしっかりかわせるからだ。

と、私がくどくどと話していると、(仮)泉君は「これが仕掛けですね、一本もらいますね。ふひひ。」と、勝手に仕掛けカバンからを引き抜いて、手釣りでカニ釣りを始めた。

人の話を全く聞いていない。

私は改めて護衛について語る。

犠牲を出さないことへの執着、海老一粒一粒への優しさ、こだわり抜いた撒き餌。

「おお、カニが一度に三匹付いてきましたよ、万太郎さん、カニマンション発見です、ふひひ。」


万太郎3年の魚をくぐり抜け続けた努力。

「うわ、フナムシきもくないっすか、うじゃうじゃじゃないですか。カニとフナムシどっちが強いんですかね、ひひひ。」

そして、丹精こめて1から手作りしたウキの数々を披露し、説明する。

「こないだの出張、実はお客さんと会えずだったので、そのまま帰ってきたんすよ、へへへ。」

ギマとの戦いの数々。

「釣りしてる人って、釣りしてる時、何考えてるんでしょうね?」

いなくなっていった海老、イソメについて涙ながらに語った。

「あれ、ウキ沈んでないですか、来てますよ!」

私は我に返るとウキを探した。

ない。

慌てて合わせを入れ、あたふたとリールを巻いた。

「まじっすか、さすが部長っす!」

網だの、引っこ抜くだのと慣れない様子を晒しながら、魚を陸に揚げた。

メジナだ。

「こんなのが釣れるんすね、さすがっす。」


私は、まるでいつもの事だと言わんばかりの表情で、こんなのは小さい方だよ、と目を泳がせた。

27cm。



  その後、リールの使い方などを教え、(仮)泉君はカニ2匹とハゼ2匹をお土産にし、駐車場で別れた。

帰りの運転中、後ろの車に煽られていると思ったら、(仮)泉君だったことは言うまでもない。




(仮)泉さんにはこのブログの存在はもちろん話してません。ばれたらどうしよう。先に謝っときます。すみません(仮)泉さん。周りには内緒で。

2018年8月7日火曜日

07月15日 若洲海浜公園 ~遅刻~


どうも皆様おはようございます。

ジャペーン@万太郎です。


  日本の国民は時間感覚に優れた民族だ。

何をするにしても時間ぴたりだ。

この日本に住んでいる方々はそれが当たり前になっているであろう。

しかし、ちょっと飛行機に乗るとそれがすぐにわかる。

電車だってまともには来ないし、約束であっても遅く来ることが当たり前どころかそれが礼儀と言う国だってある。

かく言う私も日本人であるが故、遅刻に対しては大変な罪悪感であったり、嫌悪感を覚える。


  今日は久々に釣りができる日だ。

雨が降り、風が吹き、嫁が怒り、子供が騒ぐ。

一週間に一度程度の、3,4時間。

時間にすると、168時間のうちの3,4時間だ。

しかし彼らは私の人生の2,3%の時間の楽しみすらも奪うのだ。

それをすることで大枚はたくと言うのであれば、遠慮もしようがせいぜい、餌代、駐車代だ。

1000円いくかいかないか。

そんなプライスレスな時間をようやく手にした、この日。

まさかの寝坊だ。

妙な緊張感からじわりと目が覚め、目覚まし時計に目をやると予定の時間を1時間過ぎてしまっている。

私は半べそをかきながら、急いで準備をし、車に飛び乗った。

普段はシミュレーションをしながらのんびり踏むアクセルも、今日はその足に力が入る。

嫌がらせをするように赤い目を光らせる信号。

私はふざけながら信号を渡る夜を明かした若者達を睨みつける。


  駐車場もいつもより混んでいるように感じられ、奥の空車スペースを確認せずに、空いている場所に車を停車させる。

荷物を持ち、小走りで人口磯に向かう。

若洲の空気から遅刻した異物を押し出すような圧迫感を受ける。

すれ違う夜を徹したルアー勢が、私を白い目で見る。

今頃何しに来た。

若洲の満潮の潮で溢れた海水が歩道を満たし、私の行く手を阻む。

かろうじて、水の途切れた場所を見つけ、人口磯にたどり着く。


海に目をやると、行き交う波もよそよそしく感じられる。

私は遅れた時間を取り戻すべく、急いで仕掛けを準備し、海へ投げる。



  前回に引き続き、ふさふさの房掛けだ。

一本の鈎に5,6本のイソメを付け、浮かれる私を付けられたイソメもが白い目で見ているようだ。

今日は混むだろうと思った人口磯にも何故か人目が無くなる。


魚も私に見向きもしない。

思ったより時間の進みが遅く感じられる。

みなに冷たく当たられている気がするからかもしれない。

徐々にその理不尽さに憤りを覚え始めた私は手荒にルアーを巻き、力任せに竿を振り、仕掛けを投げつけた。



  浮きは一度も沈むことなく、イソメにも何の異常も無い。

皆、遅刻した私になど見向きもしない。

遅刻した者には人間も魚も厳しくなる。

それがこのくそったれな日本だ。

私は遅刻がそんなに悪いことなのかと、憤りを感じながら釣竿を片付けた。

納竿。



  帰宅して、目覚まし時計を見ると、おかしい。

1時間進んでいる。



私は深く考えないことにし、当り散らした釣竿に手入れをすることにした。



ぼーず。すんません眠いっす。ぼーず。