2017年5月19日金曜日

~過去の追憶~ 若洲五目襲撃

どうも皆様おはようございます。
万太郎です。



イソメの護衛に自惚れ、堕落した日々

社長に若洲海浜公園を勧められてから半月ほど。

2016年10月2日。

朝5時。

私は例のルアーロッドを右手に、イソメを左手に、人工磯を慎重に歩いた。

私は買ったばかりのウキを道糸に通し、爪楊枝で固定した。



どこの海だって同じだ。


私はいつもの要領で護衛を続ける。

この場所はこの時間からでも人が多く、また、続々と人がやって来る。

竿一本分の距離に慣れたサングラスの男。

マキエだ。

高須では投げ釣りばかりだった。

マキエがどの程度の効果があるのか。

私はそれに対しての信頼は全くなかった。

隣のグラサンがマキエを撒き始め、30分くらいだろうか。

組立式の椅子にのんびり座っていたグラサンが突然立ち上がる。

それと同時に竿を立てる。

暫しのやり取りのあと、30cm前後のチヌだ。


煙幕を焚いててもこの様だ。

私は丸裸のイソメに不安を覚える。



    魚はそんな私の不安を見逃すわけはない。

ウキが沈み込む。

しまった。

ゆっくり慎重に竿を立てると、やはりイソメは襲われているようだ。

イソメ!

私は更に慎重にリールを巻く。

やたらめったらと竿を立てる。

ただただ慌てるだけだ。

イソメ!

やられた。


その後はボロボロだ。

一度崩した調子を建て直すことは出来なかった。

私は余りに縮み上がって、恥も外聞もなく、隣のグラサンの煙幕の近くに仕掛けを投げる。

もう、助けてくれ。

しかし、それを許してくれるような相手ではない。






なんてことだ。

今までギマからの護衛のみで天狗になっていた。

海は、広い。

若洲海浜公園。

これほどまでに厳しい襲撃を受けるとは。



 私は心臓の高鳴りを感じながら、自分の失敗を悔いるとともに、それと同じくらいの燃え盛る熱意を押さえることができなかった。

ここで、護衛をしてみよう。

やらせてもらおう。

そう決意し、大失敗の護衛に満足感を得、帰路に就いた。





 5目目はその日のうちに行った臨海公園でハゼ。じゃ駄目ですか。駄目ですよね。ごめんなさい。




 一旦 おわりです。

2017年5月18日木曜日

1億年の記憶

茶色く濁った水の中。

流れはゆっくりだが、滝の下という場所がら水の動きは絶えない。

大小の魚が忙しく泳ぎまわり、あちらこちらで口を動かす。

一際大きな魚だけが、ゆっくりと水の底を回遊している。


 私は種の記憶を司る個体。

種の記憶を司る個体は稀に生まれるので、その種の中で唯一無二の存在というわけではない。

だが、ここ数百年で個体の数が大きく減少した。

今は私のみかもしれない。

私は種の中でも稀な存在。

我々の種の寿命は15年20年程度だが、私は百年ほどは生きている。

記憶を司る存在としての自覚のせいかどうかはわからない。

私は長い間ここにいる。

あまりにも長い。

だが、絶えるわけにはいかない。


 少し昔話に付き合っていただいてもいいだろうか。

我々の種は、古く1億年ほど前から存在する。

恐竜全盛期の頃だ。

あの頃は馬鹿でかい生き物がたくさんいたし、我々程度の大きさの生き物は全く珍しくなかった。

種の記憶を守る為、種の存続の為、様々な生き物が生まれ必至に生きた。

そして絶滅していった。


    我々は魚の中でも一際硬く大きな鱗を持った。

ピラニア等鋭い牙を持ち、集団で襲い掛かってくる外敵に対して、この鱗はとても役に立った。

肺の呼吸も身につけた。

我々が住むこのあたりは、雨季と乾季の差が激しく乾季の時には、水位が大きく下がる。

その分水温は上昇し、水中の酸素がなくなり、酸欠になる。

水面に顔を出し呼吸をする。

肺呼吸はとても役に立った。

たくさんの固い突起のついた舌で、食物を押しつぶし、虫、魚、蛙等はもちろん、時折落ちてくる鼠や鳥まで食べ、食料に困ることはなかった。

6000万年前、恐竜を主とした様々な種の生物がいなくなった。

理由はわからない。

それでも、我々は生き延びた。



 それからゆっくりとした時間が流れ、100万年ほど前だ。

人類が生まれた。

その小さな人間の数は瞬く間に増えた。

200年程前までは、その人間に対してもこの固い鱗、大きな体は役に立った。

だがその頃からだ。

人間たちが我々の鱗など役に立たないような鋭い棒を使い出したのは。

長い間その鱗に守られていた我々は危機管理能力などない。

どちらかといえばのんびりしている。

驚いた時に水上に飛び上がり人間の乗っている乗り物ごと潰してしまう事はあった。

だが、稀なことだ。

我々が一番人間に狙われるのは、呼吸をするために水面に顔を出したときだ。

酸欠から逃れる為に身につけた能力が裏目に出た。

我々の鱗は硬くざらざらしていて、人間達の生活に必要なものとして使用される。

我々の大きな体は、人間たちの食料として、祝いの場等で重宝された。

身を守るための鱗が、大きな体が狩猟の目的とされた。

この舌だって利用価値があるらしい。

更に、現在では魚に似せ、針の付いた道具を使い、我々が間違ってそれを口にしたとき、とても強い糸で引っ張り上げられる。

何でも食べることがまた裏目に出た。

糸で引っ張られたあとは針を取り、戻されることもあるが、そのまま絶命してしまう個体も少なくない。

そもそも身体は大きいが生命力が強いわけではないのだ。


 我々の個体は急激に数を減らした。

なぜ私が唯一生きながらえているかというと、この種の中では珍しいその生域と食性にある。

魚を口にしないのだ。

プランクトンやせいぜい赤虫だ。

これであれば、その罠にかかることはない。

また、滝の下での生活であれば、酸素はうるおい、たとえ息継ぎに顔を出したとしても目立つことはない。

子供もない。

子育てはリスクを伴うからだ。

私はこうして唯一の記憶を司る個体として、ここに生きている。

そして、今は人間同士の約束により、我々の種は人間自体に保護されているようだ。

しかし、いつ不届きな者が現れるかわからない。



 今日は疲れた。

                                             どうも皆様おはようございます。

魚を食わないので、さすがに腹が減ってきた。

                                         万太郎です。

濃いプランクトンがあるのであれを一口頂いてから眠るとしよう。

                                     電話が鳴っている。

                                 電子殲滅隊からだ。










2017年5月17日水曜日

社長心に美容室

どうも皆様おはようございます。
万太郎です。



 被害ゼロを報告すべく、社長室へ。

社長はやけに不機嫌だ。



前回の報告遅れを根に持っているのか。

今回の件について一通り報告を終えたが、やはり不機嫌だ。

私はその社長のもふもふした毛並みが少し小さくなったように見えた。

いつもの感じで社長の首根っこをぐりぐりしたり、ボディーチェックをしてみると、毛玉がなくなっている。

どうやら、美容室に行って毛玉をとってきてもらったらしい。

そこで、社長、随分と毛並みがきれいになりましたね、などとうやうやしく褒めてみた。

すると、目にもとまらぬ速さで、上半身をくるりと後ろに向け、その反動を利用し、同じ方向へ、腰を回す。

さらにその反動を利用し、回転した先から逆足のかかとがまっすぐ私の腹部に飛んでくる。

後ろ回し蹴り

私は突然のことに驚き、それに身構えることもなく、そのかかとが腹部に食い込む。

棒立ちだった私はその衝撃に後方に2回転程吹き飛び、生ゴミと書かれているゴミバケツに背中から倒れ、嫌な匂いのするゴミを体に散乱させる。

それでも何がおきたかわからず、呆然と社長を見つめる私に、なにも声をかけることもなく社長は部屋を出て行った。



いったいなんなんだ。



 私も社長室を後にし、事務所に戻る途中に専務と会う。



先ほどのことについて聞いてみると、

くーん(美容室行ったの先週じゃなかったか?)

くーん(それに気づかなかったから怒ったんじゃないの?)

くだらないことだ。

そんな、女の子じゃないんだからとぼやく。

専務が驚いた顔をした。


わん(社長、女だぞ。)

2017年5月16日火曜日

5月14日護衛ミッション 若洲 後編 ~進化~

どうも皆様おはようございます。
万太郎です。



 前回の続き

 人口磯が混んでいる。


朝5時でこの有様だ。

奥のほうに行きたいところだが、今日は堤防に近い方での護衛をしてみよう。

私の気分を悪くさせていた霧雨は既にあがっている。

海水に前回のような濁りもなく澄んでいる。



白あみこませを十分に混ぜ、今日は新しい鈎を道糸に結ぶ。

遊動浮きの仕掛けを作るのも慣れてきた。

私も少しは進化してきたと言えるだろう。

仕掛を作る視界の外で海を叩く水音が聞こえる。

マキエかルアーかと思い、目を向けると別の位置から水音。

魚が跳ねている。

活性が上がってきたか。



 仕掛を海に投げる。

足元から7,8m。

棚は1ヒロ。

投げた棒ウキはあるかないかの波とともに足元から5mに近づいてくる。

ふっとウキが沈んだと思うと、根がかっている。

1,2度の根掛かりは道糸を引っ張って解消できたが、大抵は仕掛ごと抜けてしまう。

見た目どおり、堤防に近い方の海は浅くなっているのだろう。

それを考えれば、魚の数は少ないであろうし、護衛は楽になるはずだ。



 だが、おかしい。

ウキの沈みは観測されないものの、海老の行方不明は着々と増えつつある。

そして、仕掛の数も減ってくる。

ウキがなくならないのは不幸中の幸いだ。

また根掛り。

道糸を引っ張ると、根掛かりが解消されたようで、仕掛けが戻ってくる。

しかし、その戻ってきた鈎をよくよく見てみると。


鈎が鈎に掛かっている。

この現象が証明することは一つ。

魚が海中から鈎を投げ、私たちの海老を逆に釣ろうとしていることに他ならない。

ウキも沈みこまず、きれいに海老だけ行方不明になっているからくりはこれだったのだ。

魚は、奴らは進化している

そんな恐怖におびえていると、それをあざ笑うかのように足元で一匹の魚が跳ねた。



 その後も完全な護衛が続けられた。

だが、視覚的にも魚が捕らえられる状況になってきた。

魚の跳ねる水音を聞きながら納竿。



海老被害      0
行方不明  やや





刺牙で釣りたかった・・・。魚さん一度くらい引っ張って!ボーズ。

2017年5月15日月曜日

5月14日護衛ミッション 若洲 ~進化~

どうも皆様おはようございます。
二日酔い万太郎です。



 秋田狐。

前回使った針だ。

また、完璧な護衛であった。

それは私の実力かもしれないが、針のおかげでもあるかもしれない。

何でも試してみることが大事だ。

今自分はグレからの護衛を対象にしたマキエを揃えつつある。

鈎もやはりそうすべきだ。

そこで、見つけたのがこちらである。


グレ用の鈎だ。

特に右側の刺牙(サスガ)は、鈎の色が白い。


海老にも見えるような不思議な錯覚を与え、サビキの鈎としても使えそうなほどだ。

お値段は少々張るものだが、これを使ってみたい。


二つほど新しい仕掛けを新調した。

深い方に白の針、浅い方を黒のものを一つ、その逆のものを一つ。

がん玉は重めにした。

二つくらいでは若洲の浅い底にすぐ根がかってしまうかもしれない。

その時は以前使用したものを改めて使用する。

新旧に捕われず、色々なものを試してみたい。

それこそでこそ新しいステージが見えるはずだ。



 昨日の雨で、大きく気温を落とした本日気温は16度。

満潮5時50分、干潮12時、中潮、満潮付近での釣りになる。

朝は傘のいらない程度に霧雨がぱらつき、車のフロントガラスをうっすらと湿らせる。


天気からもこの日の気分も、何故かもやもやとしている。

理由はわからない。

だが、それでも海老の護衛に出かけるのだ。



 若洲の駐車場に車を入れると、すでに多くの車が止まっている。

人が増えてきた。

堤防に並ぶ人の数も、両手を使わなければ数えられないくらいに。

それを見ただけでも、魚の攻勢が強くなってきていることがよくわかる。

バッカンに入った白あみこませの海老たちに、安心しろと視線を向ける。

私はもやもやとした気分に気合を入れなおし、人口磯へ急いだ。


続く。

2017年5月14日日曜日

3m60cm マカジキを釣る。

どうも皆様おはようございます。
ホラー大好き@万太郎です。



 さきほどから電話が鳴っている。

電話のディスプレイには電子殲滅隊の文字が浮かぶ。


私は電話に出ようか迷っていた。

ネタが作りづらい。

面倒くさい。



釣りブログだから釣りゲームの釣果も載せようなどと、安易な考えから始めてみた。

しかし、それ故ゲームに関しての釣り方、方法などに興味のある方が見に来るような場所でもないから載せ方に頭を悩ませる。

電話は鳴り続ける。


だったら辞めればいい。

簡単だ。

誰も期待していない。

誰も望んでなどいない。

電話は鳴りやまない。

この電話は私の心の中から聞こえてくるのかもしれない。

ウサギのTシャツ、ピンクのスカートを履いた、セミロングの女の子。

それが笑顔で心の中で叫ぶのだ。


お前がやると言い出したんだ。


そして、あなたの後ろにも…。



こういうテイストもどうか。

2017年5月13日土曜日

メジナ被害報告

どうも皆様おはようございます。
万太郎です。



 先日海老の被害を出した。

しかし、社長への報告をすっかり忘れ、その被害の検証等を行い、数日が過ぎてしまった。

遅くなってしまったが報告しないわけには行かない。



    私は社長室をノックし、神妙な面持ちで部屋に入る。

すると、部屋に入るなり、社長の平手が飛んでくる。



私は一瞬何が起きたのかわからず、それを無抵抗に頬に受ける。

そうか。

既に社長は知っていたということだ。

しかし誰が・・・。

視界の端ににやにやした赤いあいつが横になっている。


あいつがチクったか。

くそ。

私は部屋のドアを開けたその場で棒立ちになり、うつむき加減で先日のメジナ被害について報告をした。

報告が終わるか終わらないかの時に、社長がそれを手でさえぎり、今度は逆の方向から平手が飛んできた。

私はその横暴な方法に少し躍起になって、たった一匹、たった一匹だぞ、と心に思った。

それを察したのか、社長は髭を揺らした。



それはこういっているように感じた。

「一寸の虫にも五分の魂」という言葉がある。どんなに小さな命でも意思を持って動き活動している。それが例え小さな蚊だったとしてもだ。邪魔だからといってパンと両手を合わせれば殺せてしまうだろう。しかし私であれば、その虫がその場所にふさわしくなければ、コップにその虫を捕らえ外に逃がしてやる。それが優しいのではない。命は平等なのだ。大きな命でも、小さな命でも関係なく、殺生は地獄行きだ。また、仏教の世界で言う、輪廻転生というものを信じていれば、そんなことはできないのだ。もし自分が次の生まれ変わりで虫になったらどうであろう。自分の愛したものの生まれ変わりが虫であったらどうであろう。一見自分と関係ない命であっても、それはすべてに繋がりがあり、そして、自分の行いはいつか必ず自分に返ってくるものである。それが輪廻というものだ。


私は、腹の底から、涙ながらにすみません、とつぶやいた。

そして、社長は満足したように、ごろんと横になった。



それは、

失敗はいい、だが報告はしっかりしろよ、と言っているようだった。



 頭を下げた私の視界の隅に、小さな虫が棚の後ろから顔を出した。

それを見つけた社長は、お尻をゆらゆらさせたかと思うと、全力で突っ込み、虫に何度もパンチをお見舞いしていた。

2017年5月12日金曜日

FF 釣り好きに悪い奴はいない

どうも皆様おはようございます。
万太郎です。


 A=B、B=C。

これすなわち、A=Cに他ならない。

また、A≠B、B=C であれば、

A≠C である。

ということを前提に本日の記事を書かせていただこう。




簡単には、外見だけでなく、むしろ内面が重要であろうと。

何かに真剣に取り組む、何かを成し遂げようとする男、仕事のできる男はイケメンであると。

この認識と等しい能力を持つのであれば、私はイケメンと認定をする。



 仕事であろうと家事であろうとトレーニングであろうと、段取りがすべてだ。

釣りに関連する話であればその準備は当たり前のこととして、魚の上陸を許したあとの魚の供養、調理に関しては段取りがすべてと言える。

釣り、料理のできる者は、仕事ができるのだ。



   このFFという世界の中では、果たしてどうだろう。

釣りのスタイリッシュさ、魚のリアルさ、ルアーの選択肢はなかなかのものだ。

ルアーの口ばしから波紋を出すなどという、意味のわからない設定は無視をするとしても、チョコボの形のルアーはなかなか小気味が良い。



ルアーゲームとしてはまあまあだ。

このどこに出しても恥ずかしくない外見をした男が釣る。




    そして何より、このゲームではこの外見の整った男が魚をしっかりと調理するのだ。


大抵、手に入れた魚は丸飲みだ。

せいぜい、上手に焼けました、程度であろう。

それを考えると、この誰にでも好かれそうな外見をした男たちはある程度の常識を持ち、段取りのできる人間といってもよさそうだ。

調理過程が省略されるのが難点だが、出来上がりの見た目はなかなか良い。
   



まだ、私の進捗状況からは、そこまで手の込んだものはできていないようだが、今後の彼らに期待することとしよう。



 そういった意味合いでは、彼らはとりあえずのところ、外見を除いてはイケメンであると、認定してもいいのかもしれない。



しかし、残念ながら彼らの外見がイケメンと認定されることはない。



    これに対しては、九文字で解答が用意できる。

 それは、私がイケメンだから だ。


2017年5月11日木曜日

5月7日釣りミッション 若洲 後編 ~刻海老~

どうも皆様おはようございます。
万太郎です。



 前回メジナ被害が出た。

今回はどうだ。



人口磯に釣り座を作る。

マキエを作り、仕掛を作る。



前回の釣行で竿の先端が折れてはいるが、問題なく使えそうだ。

様々な検証も兼ねて、ウキが沈み込むことの増えた昨今、海老の行方不明がどの程度なのかもついでに検証したい。



 まず、手元の海老の数を数えよう。

パックの中からすべての海老を出し、1,2,3…、と数えながらパックに戻す。

途中、隣で騒いでいた小学生が祖父に歳はいくつだったか聞かれている。

8、と子供は元気よく答えた。

海老の数は17だった。

思ったより少ないがそんなものなのだろう。

さっそく海老の護衛を始めよう。





 今日は、昨日の夜半の雨のせいか、強風のせいか、水が濁っている。

こんな日は魚の活性も低そうだが、チヌは水の濁りを好むという。

メジナからの護衛を目的にしたマキエだが、そちらの方も気を配らねばなるまい。

と、そんな折、ウキが沈む。

私は冷静だ。

海老が魚に襲われないよう、しっかりとエスコートし、魚をやり過ごす。

ウキは何事もなかったかのように、先ほどの深さまで戻り、平静を取り戻した。

しかし。

仕掛を引き上げると、海老がいない。

このところ、よくあるな。

新しく海老を付け替え、同じ位置あたりに投げ込むと、すぐさまウキが沈んでいく。

大丈夫。

なんでもない。

しっかりと魚をやり過ごす。

しかし、やはり海老がいなくなっている。

すばやく海老を付け替え、手返しをする。

マキエを撒く手にも力が入る。

これ以降は同じ場所ではウキの沈みは確認できなかった。

その後も、ウキの沈みはなくとも、ぽつぽつと海老は海の中に消えていった。



 ついつい、マキエの使用に力が入り、いつもより早く、マキエがなくなる。

時間も時間だ。

もうそろそろか。

最後に、海老を数えてみよう。

パックから残りの海老を手の平にあけ、パックに戻しながら数を数える。

1,2,3…、と数えていると、隣の小学生と祖父が話しをしている。

おじいちゃんって何歳?

68だよ。



さて、海老の数は…、73?

増えている?

とんでもなく増えている。

どういうことなのか。

若洲海浜公園の時空間のねじれ、風水の状況、今朝の夢占いの結果、北斗七星の近くに死兆星が出ていないか、私はありったけの経験則と情報を頭の中に巡らせた。



 そして、私は一つの結論にたどりついた。

答えは初めからわかっていた。

簡単なことだった。

世の中に不思議なことなど何一つないのだ。

答えは、そう、行方不明だ。

戻ってきたのだ。

今まで行方知れずになっていた海老戦士達が。

私は海老にご苦労様、とねぎらいの言葉を掛け、釣具を納め、帰路に着いた。




海老被害   0



小学生は人口磯でハゼ2匹釣れたみたいです。私ゃボーズ。

2017年5月10日水曜日

5月7日釣りミッション 若洲 ~刻海老~

どうも皆様おはようございます。
万太郎です。



 納得がいかない。


マキエ、付け餌、仕掛、ウキ、様々な要素を一度に変更した為、何故に護衛がうまくいかなかったかがわからないからだ。

こうなっては一つ一つ変更し、元に戻し、原因を確認していかなければいけない。

今回は、ウキを変えずに、マキエと付け餌、仕掛けを変えてみようと思う。



前回は白あみこませと配合餌で白あみこませをそのまま付け餌にした。

赤あみこませと配合餌、付け餌を冷凍海老で護衛をしてみる。

気象条件、潮、気温、場所などの要素もあるので一筋縄ではいかない検証になるが地道にやってみるしかない。

もう一つ。

仕掛だ。

前回はエダスをいれない、針一本での勝負だった。

流石にアイデンティティーが崩れるというもの。

こうなってはただの意地かもしれないが、エダスを一本入れたい。

鈎は二つだ。

鈎は昨年、キス釣りの名目で買い、ギマにずいぶんお世話になった鈎、秋田狐を使ってみる。





 それと、ここ最近増えてきた不安要素もある。

海老の行方不明だ。

魚が確実に食ったのであればあきらめがつく。

しかし、その仕掛に魚の影が見当たらないのだ。

これを簡単に被害として出してはいけない。

どんな絶望的な行方不明であったとしても、その遺体が確認できるまでは行方不明である。

どんな絶望的な被害状況で発見されたとしても、医師の診断がない限りは死亡の確認はされない。

これと同じだ。

今までの海老はすべて行方不明である。

海老は何食わぬ顔で戻ってくるかもしれない。



 本日は、満潮2時、干潮9時、中潮。

干潮に向かっての釣りになる。



 釣竿は迷ったが、今まで通りの宇崎日清だ。

先端は折れたが、問題ない。

厳密に言えば、大きな違いがあるのだろうが、私のレベルからみれば、10cm程度短くなったくらいだ。

問題ない。

最終日とはいえ、GW。

そして天気は…、曇り気味。

しかし、人は多い。

こんなに朝早く、小学生くらいの子供までおそらく祖父と一緒に、人口磯で小さな釣り竿をかざしている。

私も負けていられない。

さあ、検証だ。


続く。

2017年5月9日火曜日

メジナの供養

どうも皆様おはようございます。
万太郎です。


 海老に食らいついた魚を捕獲した場合、それは速やかに供養されるべきである。

太古より供養とはすなわち食すことだ。

私はこの供養に関しては専門ではない。

だが、小さい組織の中では様々なことしなければならない。

供養には様々な方法があるが、本日の供養について思いめぐらせ、一つの方法に思い当たった。

今回はあれでいこう。




 まずはメジナをまな板にのせる。

右手に包丁を持ち、魚を前に神経を集中させる。

大きく、腹の底まで存分に息を吸い、ゆっくりと、少しづつ、腹の底に溜まった空気押し出すようにしっかりと吐き、絞り出す。

すべてを出し終えたらそれに栓をするように息を止め、目を閉じ、全身の皮膚から周囲の空気を感じとる。



 ここからが正念場だ。

周囲の空気から寿の念だけを抽出し、自らの体に秘める。

その寿の念を体の中で圧縮し、言霊と印に変換する。

寿力を持った九字を唱え、両手で印を結ぶのだ。

刃の印。

鱗・包・丁・斜・押・当・削・取・全!

私の体からその寿の念がメジナへと移り、メジナの鱗が溶け出すように流れ落ちる。

何とかうまくいった。


間髪入れずに次の九字と印に移る。

頭・上・刃・入・切・断・腑・去!

ここでの方法はこれに限らないが、今回はこれが最善と判断した。



 ここまでできれば、すでに海老を襲った時の黒い魚魂は消え失せる。

あとは寿の念を送り込み、その魚魂を善とするための作業が残っている。



 下味の九字を唱え、儀式を行う。

胸の前で左手で拳を作り、右手人差し指を刀になぞらえ空を切る。


まずは左から右に空を切り、上下、左下から右上、最後にゆっくりと目の前で止める。

醤・油・酒・味・醂・生・姜・適・量!

そして次に、火の印だ。

沸・騰・加・熱・落・蓋・火・拾・分!



 メジナは魚魂をすっかり入れ替え、見た目にも儀式の前後で別人のようだ。

さらに、その魂に神の助けを呼ぶ水、お神酒を添える。


まだまだ未熟ではあるが、これで、一通りの儀式は終えた。


 この儀式の終わりとともに、次回の護衛の成功を祈る。